ああ、なんという恐ろしい話だろう。毒薬というものは、使いようによってはひとも殺すが、また使いようによっては、ひとの命も救うのである。
学問もそれと同じこと、そのひとによって、こんなにも恐ろしい結果となったのだ。横溝正史『黄金の指紋』(角川1978, 128)
出典はジュブナイル版金田一耕助の1編から。天才科学者にして大強盗の古柳男爵は、自らの脳をゴリラに移植させて刑死から逃れた。そして誕生したのが怪獣男爵。
怪獣男爵が恐ろしいというよりは、学問が恐ろしいといったニュアンスがあるように感じられるのが興味深い。ちなみに横溝正史は薬学を学んだ後、実家の生薬屋で薬剤師として働き、その後に編集者・作家となった。