STS学会とJASCで発表

12月6日と7日に第24回科学技術社会論学会(STS学会)年次研究大会が水戸の常磐大学で開催されました。そしてなんと、同じ日程で東京にてサイエンスコミュニケーション協会(JASC)も開催!

水戸市にある常磐大学がSTS学会の会場。銀座のJASC会場まで直線で約100km。

まず12月6日に修士課程植田さんが「科学に関する一般向けテキストコミュニケーションの分類の再検討」と題してJASCで発表をしました。植田さんの発表の場としてJASCを選んだ理由は、今後のネットワーク形成も考慮し、科学技術コミュニケーションの実践者があつまる場がふさわしいというのもひとつです。内容は、テキストを用いた多様な形式・内容の実践を、過去の科学随筆や現代の科学エッセイ、自身で実施したインタビューなどから整理するもので、今後の修士研究の地盤を固める発表でした。川本は座長やら総会業務があるためSTS学会に参加し、植田さんの発表はオンラインで視聴(すまん)。

翌7日のSTS学会第3セッションでは研修科修了生の成田さんが「太平洋島嶼国でのデジタル分野における主権概念の整理と課題の考察」と題して発表をしていました。今大会の中でもユニークなテーマで、島の持つエージェンシーに着目した研究ともいえるでしょう。これまでの太平洋島嶼国でのお仕事の経験と、現職での専門性が織り込まれ、研究として大分練り上げられてきました。今後も要チェックです。

発表する成田さん

そして最終第4セッションで川本が「伝書鳩がつなぐ軍学民のネットワーク:1920-40 年代遺伝学と社会」と題して発表。昨年度に引き続き、伝書鳩と両義性に着目した歴史的STS研究の第2弾です。今年は小樽という地域に対象をしぼって伝書鳩ネットワークを整理してみました。申し込み時のタイトルは「遺伝学と社会」と幅広すぎて、「在野研究者と地域社会」が正確だったなと発表資料作成時に反省。発表会場や懇親会でいろいろ議論させていただき、有益な示唆をいただけました。

発表する川本

興味深い発表はいろいろありましたが、デュアルユース関連に絞って挙げるとすれば、以下。

  • 「1980 年代米国における知の軍事化とNSDD-189の成立過程」渡邊康宏(東京科学大学)

軍事研究と学術研究をどう線引きし、どのように発展させ、機密を管理するかは今に始まった議論では全くありません。本発表では1985年に出された米国の国家安全保障決定指令第189号(NSDD-189)を題材とし、これにより学術への干渉を抑えつつも、大学における軍事研究の拡大を正当化する論理の基盤となったと整理していました。米国におけるこの問題を考えるうえで重要な文献が、コーソンレポートこと1982年にNational Academyが発表した「Scientific Communication and National Security」で、読んではいたのですがNSDD-189との関連はまったく理解できておらず大変勉強になりました。コーソンレポートでは機密区分にグレイエリアがあるとしていましたが、NSDD-189では機密か否かの2分類となったというのはデュアルユースの実践においても理論においても重要な示唆を与えるものです。

  • 「未知の技術に市民はどう答えたか?:新興デュアルユース技術に関する社会調査(2025 年 8 月実施)から読み解く兆候」大庭弘継(立教大学)

デュアルユース問題は、きわめて不定性の高い問題であるため、いわゆる市民の意識を調査するのは困難なテーマです。それに正面から取り組んでパイロット版の調査を実施したのが本発表。私も分担で参加している大庭先生の科研の研究成果でもあります。兵器への忌避感、高年齢層および女性層での忌避感(高いリスク感覚)という従来研究などでも示されていた傾向が確認されていました。個別の技術に対しては、ゲノム編集に期待しつつも、倫理的に回答が難しいというアンビバレントな意識も確認されました。こういった緊張関係を整理するのが第一歩でしょう。

 

さて来年は大阪。関西大学が会場です。JASCとかぶるか否か・・・

 

バスの車窓からセイコーマートを発見! 水戸市民会館店とのこと。