伝書鳩研究の論文を発表

小樽市総合博物館紀要の39号(2026年3月)に、伝書鳩研究の論考が掲載されました。

  • 川本思心: 2026, 1920–40 年代の伝書鳩コミュニティにおける小樽と佐々木勇. 小樽市総合博物館紀要, 39:37-49.

小樽のハブともいえる明治19年創業の佐々木銃砲店の第3代店主佐々木勇が伝書鳩と共に、いかに大学や軍と伝書鳩ネットワークを構築していったか、それがどう小樽の町に受け継がれたかをまとめた論文です。

これまで北大の小熊の伝書鳩研究に着目していましたが、あまりに幅が広すぎてまとめるのが難しい・・・ということで、まずは小樽という港町・経済都市に絞って、北海道と全国との関係をふまえて伝書鳩ネットワークを記述してみました。内容の抜粋は12月のSTS学会で発表もしています。

本論文は太平洋戦争終戦までを基本的に扱い、戦後のネットワークについてはごく簡単に最後に触れているだけです。戦後の小樽の鳩界についても「地域研究者」「市民科学」といった観点でまとめられたら面白い科学技術コミュニケーション研究になりそうです。

 

ここにいたるまでには様々な関心の糸が偶然のように縒り合わされてきました。

まずは北大の生物学者が書いたエッセイに対する関心。その一人が日本の遺伝学の中心人物でもあった小熊捍。

小熊が1930年代に軍の協力をえて満州で採取したというヒト染色体の研究に関する関心。

そして北大が陸軍から伝書鳩を入手していたという史料の発見。

ここまでは文献のみでそれも少なく、論文にするには十分ではありませんでしたが、以前から小樽市総合博物館に評議委員として関わらせていただいていたことが大きなきっかけになりました。

博物館からご恵投いただいていた『稲垣益穂日誌』39巻に伝書鳩について何か書いてないか、と読んでみると小樽新聞社の伝書鳩の記載があったこと。

小熊についても記述されていた『北国の鳩界』(1935)の著者佐々木勇も小樽の人だったと気づいたこと。

小樽市総合博物館の皆様のご協力で勇の御次男で第5代店主の佐々木徹さんにお目にかかることができたこと。

そして佐々木勇が博物館に寄贈した軍用鳩の剥製が見つかったこと。

インタビューにご協力いただいた佐々木徹さん。旧佐々木銃砲店前にて2025年7月7日撮影。
軍用鳩の剥製。脚環の情報から1935年に中野の陸軍軍用鳩調査委員会で生まれた鳩だとわかる。〔小樽市総合博物館所蔵〕

今に残る史料や人々から過去を徐々に明らかにしていく面白さを感じることができましたが、なにより、そういった歴史を支える方々がいることの重要性を改めて認識することができました。