ザ・コマンド 炎の奪還 LBX-043 [DVD] (2011/12/12) オレグ・ステファン、ムフタル・グゼンガジェフ 他 |
ザ・コマンド 最後の標的 LBX-044 [DVD] (2011/12/12) オレグ・ステファン、ムフタル・グゼンガジェフ 他 |
2007年ロシア・ベラルーシの作品
原題は「Майор Ветров」(ベトロフ少佐)
テレビシリーズらしく「炎の奪還」「最後の標的」の2枚に収録。
何も奪還してない気がしますが、前篇「炎の奪還」(原題:Миротворец (平和の維持))のあらすじは以下の通り。
1990年代、南部国境では国境を跨いで活動する麻薬組織と軍が対峙していた。ベトロフ少佐率いる部隊は上官の命令を無視し、越境して組織のアジトに踏み込むものの、彼を除き全滅してしまう。からくも脱出したベトロフだったが命令無視で捉えられる。しかし彼は逃亡し、麻薬組織が運び屋とコンタクトするという街へ向かう。そこは彼の父、旧友トーリャとエメリャーノフ、そして彼を捨てた女マリーナがいる街だった。
後編「最後の標的」 (原題:Друзья(友人))
内務省に追われながらもベトロフはハキムと麻薬の行方を探る。ベトロフの旧友トーリャは借金返済のためハキムの麻薬密輸を引き受け、ベトロフを罠にかけて逮捕・投獄させる。しかし、一方のトーリャもハキムに姦計が露見、ハキムの脅しによって妻のマリーナが夫に代わって密輸をすることとなる。ハキムの密輸を阻止するため、ベトロフは移送中の鉄道から脱出する。
冒頭、BTRにタンクデサント(という言い方がおかしければBTRデサント)で道行くシーンを見て、あーあぶないあぶない!しょっぱなから大量死シーンか?と思っていたら、そこではそれほどやられず一安心。
主人公のベトロフ少佐もベテランを思わせる風貌で、上官の命令を無視して敵を追撃したりと期待させる。
しかしベトロフ部隊は何の偵察もなく真昼間に全員団子になってアジトの村に侵入。そして案の定、蜂の巣。
まさにダメソ連軍の申し子。
そんなダメなベトロフさんが、ハキム率いる麻薬組織を追う本作。
例によってタイトルとジャケットで騙されてしまいそうですが、本作はもちろん戦争映画ではなく、戦争アクション映画でもなく、アクション映画に属する映画です。
ベトロフの部隊による戦闘シーンも描かれますが麻薬取引、旧友や過去の女とのあれこれ、ベトロフを追う内務省、真実を報道しようという新聞記者などを描いたシーンがむしろ多く、全体の3/4ほどを占めています。
結論からいうと、イマイチな出来。
理由は以下の通り。
1.なぜベトロフが逃亡してまでハキムを追うのかの動機が浅い
二人はアフガンでの因縁があることが描かれていますが、それほどのこととは思えない描き方。
また、そこまで執拗に追っていながら、最後の対決ではハキムを殴り倒しただけで終了というあっさりさ。
最後は敵と一対一の肉弾戦というアメリカンなテイストの展開ながらも、その最後のあっさりさにロシア的味付けが残っている?
2.圧倒的なスケール感のなさ
ジャケットにある「巨大な麻薬組織」はいつものことなのでさて置くとしても、ハキム一味が10数人レベルのチンピラ集団にしか見えない。仲間にはお約束のパツキン悪女の他、中央アジア系だけではなくロシア系やアジア系、アフリカ系もいるのだが、かえって安っぽい。ベトロフ側もハキム側もみんな知り合いで、近所でいざこざ争いをしている感じが・・・
3.追われる感、タイムリミット感のなさ。
ハキムを追うベトロフもまた内務省から追われるという二重の構図は、うまくいけばハラハラドキドキの映画になるが、残念ながらそうはならず。
にしても内務省の背広姿の追跡者はトミーリージョーンズ演じる「逃亡者」のジェラード捜査官っぽい。
4.話がつながってない
え!? 死んだんじゃないの?という人がいきなり再登場。
特に後半は話の繋げ方が若干乱暴な気がします。
ということですが、見どころもあります。
ベトロフの旧友にして、彼の女と結婚した男、トーリャ。
借金まみれで麻薬密輸を押し付けられる彼の壊れっぷりが本作の見どころ。
もう一つは、ベトロフの父(内務省の警官)の部下パブローシャ役の俳優の面構え。
えー、後は出まくりのAKS-74Uとバイクメット型のヘルメットをかぶった内務省特殊部隊、といったところでしょうか。
最後に一点、本作の背景について。
本作の舞台は字幕では「ロシア南部の国境」とありますが、ロシア語の字幕では「СНГの南部国境」とあります。
つまりソ連を引き継ぎ、今となってはあるんだかないんだかわからない状態の独立国家共同体(日本ではCISと表記)です。
また、主人公ベトロフ少佐の所属する軍は「国境軍」とありますが、これも字幕とBTRのマーキングから「平和維持軍(МС: Миротворческие силы)」であることがわかります。
パッケージにはロシア製作としか書いてありませんが、海外サイトを検索すると、この作品はベラルーシも製作にかかわっているようで、それが独立国家共同体やら平和維持軍やらといった微妙な設定の理由なのかもしれません。