赤い映画:バトルライン~復讐のソ連兵・ナチス壊滅(前・後)

バトルライン 復讐のソ連兵・ナチス壊滅 前編 [DVD] バトルライン 復讐のソ連兵・ナチス壊滅 前編 [DVD]
(2011/10/21)
セルゲイ・ベズラコフ

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(2011/10/21)
セルゲイ・ベズラコフ

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2008年ロシア作品 原題 “В июне 41″(41年6月に)

例によって悶絶レベルの邦題です。
まったく期待しないで見はじめたのですが、意外や意外、ソ連・ロシア戦争映画の雰囲気を少し感じさせる作品でした。
佳作とまでは言えませんが、見た後DVDをウォアアァァァァァォォーーガーッっとぶん投げたくなるような一本ではありません。

ただし念のため。
ジャケットのコピーにあるようにドイツ軍1000万人には挑みません。ナチスは壊滅しません。
そういうのを期待している人はぶん投げたくなるでしょう。

【あらすじ】
1941年、かつてのドイツポーランド国境は今、独ソ国境となっていた。イワン・ブロフ中尉はポーランド人の恋人ハンナとの関係を疑われ、取り調べを受けるものの、疑いがはれて部隊に復帰する。しかしハンナの両親はソ連軍に殺され、祖父は反ソゲリラとして活動していた。
そして6月。ドイツ軍が川を越えて侵攻を始める。弱小なブロフの部隊は瞬く間に壊滅。彼の部下も斃れる。怒りに震えるブロフは一人ドイツ軍に対して反撃を開始する。

本作はロシアでよくある4話構成のテレビ作品。
冒頭はブロフ中尉が線路上に縛られた友軍捕虜を助けるシーンから始まりますが、ブロフの勇猛果敢なキャラクターを伝えるだけでなく、ストーリーとしても鮮やかでこれからの展開を期待させる構成です。

また、ポーランドとソ連の複雑な関係を背景にしており、悲恋的要素もあり。
花畑、流れるロシアンフォーク、そして別れる二人…といった伝統的ロマンチックなソ連映画の雰囲気を感じさせます。
ハンナ役の女優さんもきれい、かつやや薄幸そうで○。

戦争映画というと気になるのはミリタリー的要素。
ブロフは緑の制帽や肩章をつけているので、ソ連軍(赤軍)ではなく、NKVD傘下の国境警備軍に所属していると思われます。こういう細かい所も良い。
しかしその他の点というとかなりこじんまりとしています。
敵味方共に戦車・装甲車両は登場しません。
国境警備軍なら装備していないというのもまぁ納得です。ドイツ軍にしても、ブロフの部隊が守備する土地には川があり、主要な攻勢正面でもないからと好意的に解釈可能ですが。

ブロフはソ連軍人として国境を死守するという指名を忠実に守るのですが、一方で部下を殺されたという恨みも非常に大きな動機として強く描かれています。
正直、映画の主人公としてはちょっとひくレベルで怒りまくり、あの手この手でドイツ軍にいやがらせ。

このある意味新鮮なドラマも後半から雲行きがあやしくなります。
敵部隊の指揮官であるドイツ軍将校がトラウマ持ちでハンナに執着を見せ始めたり、ブロフと彼の個人的対決の様相を呈してくるのです(実際2人の殴り合いになる)。
このドイツ軍将校のトラウマ設定はいらんかった…

しかし最後はソ連・ロシア映画のお約束通りの結末で安心。

変に大風呂敷を広げず、小粒な設定のなかで独ソ開戦をひとつのドラマとしてまとめる、という点では本作はある程度成功しているように思えます。