インフルエンザにかかってしまった…
仕事をしようとするもどうにも頭がだるいので、以前に買って未見だったDVDを見る。
宇宙飛行士の医者 [DVD] (2012/04/04) チュルパン・ハマートヴァ、メラーブ・ニニッゼ 他 |
原題:бумажный солдат(紙の兵士) 2008年ロシア
パッケージには例によって英語で、なぜか英語でPaper soldierとある。いいかげんにしろ。
さて本作は1961年のボストーク1号・ガガーリンによる人類初の宇宙飛行を陰で支えた医者の話である。と書くと何やらライトスタッフ的な熱い映画であると思うかもしれない。あるいはロシア映画を知っている懸命な諸兄諸姉であれば、いやいやそんなはずはない。泥臭くてオチが無常なストーリーだが本物のロケットがバリバリ出てくる映画じゃないか、と期待するかもしれない。
しかしどちらも違う。これはいわゆるロシアゲージツ映画である。舞台演劇めいて様々な人物が、脈絡があるようでないようであるような会話を続け、それを長回しでとらえる。
主人公の医者ダニエルは常に悩んでいる。博士論文が通らない。論文が通ったけど本当に価値があるのか悩む。父が、スターリンが、フルシチョフがと悩む。さらにモスクワの奥さんの他にバイコヌールにも女をこさえていてまた悩む。ボストークに誰を載せるか選ばなければならず悩む。そもそも打ち上げ失敗しそうだと悩む。いやしかし打ち上げが成功したらこの世界は変われるかもしれないと悩む。でもやっぱり飛行士が危ないと悩む。実際訓練中に一人死ぬ。
この辛気臭い主人公のインナースペースを表現している映像がすごい。バイコヌールは地平線までぬかるんだ泥と浅い水たまりの世界。そこには崩れかけた掘立小屋と、地平から伸びてきた線路があるだけ。どこで撮影したのだろうかと驚く。
こういう映画は正直苦手なのだが、最後まで観賞する事ができた。それは映像の美しさと、題材の面白さ、あと昼寝をしていたせいで眠くなかったことが大きな理由だろう。
さておき犬が所々象徴的に描かれているのは、スプートニク2号の犬に飛行士たちをなぞらえていると思われ、他にもイメージを喚起させるセリフのやり取りなどがあり意外に面白かった。
何よりクライマックスであるボストーク1号の打ち上げシーンに、してやられた感がある。いったいこの映画では打ち上げを描く気があるのか?と中ばあきらめていたのだが、それを見事に裏切られた。その美しさと哀しさを私の拙い筆で表現することはできない。なお、打ち上げに続くカットはそもそも意味不明で表現することはできない。
最後に一応断っておくと打ち上げの後、20分も例の禅問答会話続きます。ロケットは3カット(たぶん)しか出ません。
あと結論をいうと熱があるときに見るような映画ではない。