学術的に大きな貢献をした研究者。しかしその研究者には「負の側面」もあった。こういった事例は数多くあります。デュアルユースと異なるものの、一部重なるこの問題も研究したいテーマです。
「アスペルガー症候群」はアスペルガーの名前が用いられたエポニムですが、彼にはナチスに協力したという疑惑もありました。それについての論文があります(全文閲覧可)。
“Hans Asperger, National Socialism, and “race hygiene” in Nazi-era Vienna”
Herwig Czech, Molecular Autism, 2018, 9:29
概要:ハンス・アスペルガー(1906-1980)は、明らかな心理的特徴を持つ子供たちのグループを「autistic psychopaths」として初めて定義した。これは、1938年にレオ・カナーの有名な自閉症に関する論文の数年前である。1944年にアスペルガーはこのトピックに関する包括的な研究を発表した。これは1942年に彼の博士論文としてウィーン大学に提出されたものであり、それは1980年代に国際的に認められた。それ以降、「アスペルガー症候群」というエポニムは、病状の概念化への彼の優れた貢献への認知をますます高めている。アスペルガーはナチ統治下のウィーンでキャリアの中心的な年月を過ごした、という事実は、国家社会主義とその人種的衛生政策と潜在的な結びつきに関して、若干の論争を引き起こしてきた。しかし、文書的証拠は乏しく、やがて国家社会主義の積極的な反対者としてのアスペルガーの物語が成立した。この論文の主な目的は、この叙述を再評価することである。本論文は、アスペルガー自身による発表の大部分と、彼の出版物の一部に基づいている。
どういう背景があるのか不明ですが、同じく2018年には別の著者から同様の内容の書籍も出ています。翻訳も今年でているようです(Net Gallayにあるだけで出版はされていない?)
アスペルガー博士とナチス
エディス・シェファー(光文社 2019/06/20)
ASPERGER’S CHILDREN The Origins of Autism in Nazi Vienna
Edith Sheffer (W. W. Norton & Company 2018/5/1)