CO2を削減するための方法の一つとして、地中貯留があります。
「CO2を地中に埋める」という話を聞いて、普通の人は「えっ?」となるのではないでしょうか。
本来地中にあるはずのないもの、それも(常温常圧で)気体であるCO2を地中に埋めるというのですから当然と言えます。
そういうわけで、地中貯留の実現には工学的な課題解決はもちろん、社会的な課題解決も必要であり、欧米を中心に研究も始まっています。
このCO2地中貯留(CCS: Carbon Dioxide Capture and Storage)に関する社会学的調査についてのミーティングIEAGHG 2nd Social Research Network Meetingの初日に出席してきました。
会場は横浜ランドマークタワーに入っている横浜ロイヤルパークホテルの25階会議室。
会場運営は日揮(JGC:Japan Gasoline Company)が行っていました。
またみずほ総研もかかわっています。みずほ総研はCCSに関する調査研究を行っています。
初日の発表は海外からの研究者。
意識調査には、常にその回答が本当に信頼できるデータなのかという問題がありますが、その点について複数の発表がありました。
意識調査の方法の一つは質問紙(information-choice questionnaire)で、もう一つはフォーカスグループディスカッション(FGD)です。
どちらも情報提供前と後に調査を行い、その回答を比較します。
得られた意見には「質」があるそうでPriceとNeijen(1997)がその指標としてconsistency(各論・総論間の一貫性)、stability(時間を置いての回答の安定性)confidence(主観的信念)をあげているそうです。
これらの指標で比べると、FGDより質問紙(web回答)のほうがこれらの指標が高いのでよい方法だとのこと。
これについてはほぼ同じパワーポイントがこちらから見られます。
しかしこれらの3指標が高いから、どちらが良い意見収集の方法である、ということにはならないのではないでしょうか。
webを通した情報提供と個人だけによる回答では知識や意見の変容はないということで、確かにより一般的な状況(非対人・メディアによるCCS情報との接触)での正確な意識とその変化しやすさ・しにくさを知るには良い方法でしょう。
しかしFGDのデータを「変化してしまう」という点で見るのではなく、「変化させることができる/やっぱり変化しない」という観点で見ると、コミュニケーションの方法を考え上では重要な方法になるのではないかと思います。
要は使いようでしょう。
もうひとつ興味深かったのがNear CO2というプロジェクト。
プロジェクトの名前が示す通り、CCSを行っている地域の一般の人、ジャーナリスト、行政関係者などに対して、自分の住む場所とCCSを行っている場所の位置情報などを提示したうえで、webで意見を収集するという方法をとっているそうです。
さらに今後、オンラインで写真やビデオなどの情報を提示し、その意見変化への効果を見る研究も行うとのことで、最終報告書はとても興味深いものになりそうです。
最後のディスカッションでは”adversarial survey(敵対者調査)”なるものも紹介されました。
地球環境問題に関してラディカルな意見を持っている人や研究者もあつめてキャンプ(文字通りキャンプ)をしてワークショップをするそうです。
一般的な人の「反対」とラディカルな人の「反対」には質的な差があるのではないか、という会場からの声や、結局意見をまとめてどうするのか、そもそも技術者畑寄りが多い調査者が調査したところでその結果を受け入れてもらえるのか、というのはCCSに限らず社会調査の根本的課題であります。
結局のところ、CCSを受容させるためと取られなくもない研究なのですが、本当のところ研究者はどうなのか?
私個人的には、現実的なCO2削減の方法としてCCSはやはり最右翼とは思いますが、地殻微生物圏に悪影響を及ぼすのではないか・・・という懸念を持っています。