映画レビュー『レッド・アンデス』

ソ連・ロシアの映画をご紹介する「赤い映画レビュー」
こんな時ですが、あえてこんな映画をみてはいかがでしょうか。
今回紹介するのは『レッド・アンデス』

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題:レッド・アンデス
原題:Пробуждение инков(インカのめざめ)
製作年:1984年
製作国:ソ連

DVDパッケージ解説文:
軍事顧問団の一員としてペルーを訪れたボンダレンコ大尉は、派遣された山村で反政府ゲリラの襲撃を受ける。
百戦錬磨の大尉は傷を負いながらもからくも脱出。
しかしゲリラに武器を横流ししていたイワノフ大佐は、口封じのために捕らわれの部隊を見捨てる指令を出す。
部下を救出するため、ボンダレンコ大尉の怒りの弾丸が今、アンデスに炸裂する!
ソ連軍全面協力! 戦争アクション巨編!!
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(以下ネタばれもありますので要注意)
ソ連映画のDVDを数多くリリースしている○プロのお約束どおり、煽り感満載のパッケージですが例によってそんな映画ではありません。

ボンダレンコ大尉はアフガン帰りのガチムチ系ではありますが、現地の少年にプーシキンの詩を教えたりするインテリゲンチャでもあります。
映画のかなりの部分は、名もない山の頂に黙々とレーダーサイトを建設するソ連とペルーの人々、そして近くの村の人々との交流にあてられています。

イワノフ大佐は単なる汚職軍人ではなく(当時のソ連にそんな設定は無理)、アメリカのスパイっぽいことがほのめかされていますが、ストーリー的には頓着されてません。ほとんどスルー。

あくまでメインは高く静かにそびえるアンデスの大自然と、創意工夫でレーダーサイトを建設していく人々の連帯。
どちらかというと「北の国から」的な映画です。キツネはでてきませんが、コンドルは出てきます。

とは言え、アクションシーンももちろんあります。
一番の見せ場はZU-23-2操るボンダレンコが山頂に迫るマオイストをなぎ倒し、さらにSu-22を真正面から迎え撃つシーンです。
まぁそんなに激しくぶっぱなしたり、大爆発はしませんが。

で、ですが、ロシア映画の例に漏れず、ボンダレンコ大尉は最後にあっさり、無常にも死んでしまいます。
彼の死によって現地の人々=インカはめざめるのか?といったテーマのようです。

とにかくソ連・ロシア映画はなんともいえない無常感を味わうのが通。
素人にはおすすめできない。

なお、ボンダレンコ大尉の設定ですが、ブルーのベレー、青白のチェックシャツといった軍装から、空挺部隊員だとわかります。
そして、現地の少年に「遂行できない任務はない」という第106親衛空挺師団のモットーを言ったりするので、おそらくツゥーラ師団の出身と思われます。

また、クレジットに協力部隊などは書いていないのではっきりはしませんが、風土などから撮影はおそらくタジク共和国かキルギス共和国などで行い、現地の部隊が撮影協力しているように思えます。

ペルー人も、中央アジア系の人がペルーっぽい服を着てロシア語で演じているのでカオス。
しかし、航空機などにはペルー軍のマーキングをしていますし、クレジットにペルー政府協力とあるので、公認はしているようです。

ペルーは政治的に親米、親ソと入れ替わり、さらに先住民族問題や、反政府ゲリラ、麻薬なども抱えている国で、ソ連としては地球の反対側のそういう国にもコミットしているんだ、ということを示す意図がこの映画にはあったのかもしれません。
あるいは当時進行していたアフガニスタン紛争を直に描くのは難しかったので、似た環境としてペルーを舞台にしたのかもしれません。

そういった背景を抜きにしても、ペルーの山岳を舞台にしたソ連映画は珍しいので、興味のある人は必見です。

登場兵器メモ:
T-55, BRDM-2
SPG-9, RPG-7, AK-47, AKS-47U, AKM, SVD, RPK, PKM, DShK
ZU-23-2, SA-7, AA-2, ファンソングレーダー
Mil-24
Su-17(実際のペルー軍は輸出型のSu-22を使用) 以上ペルー軍
An-12(実際のペルー軍には配備されていない)ペルー軍およびソ連軍機として登場

注:
というのは全部ウソです。
「レッドアンデス」も「インカのめざめ」もジャガイモの品種名。スーパーで見かけた時にとめどなく湧き上がった妄想。
検索しないように。

ちなみにレッドアンデスもインカのめざめもとてもおいしいです。
通販サイトがヒットしたらぜひご賞味を。