EUPVSEC(その二

二日目の目玉はセッション”Photovoltaics Forms Landscapes
会場は一般の発表が行われている会場から歩いて5分くらいの別の建物。

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EUPVSECの大半は技術開発に関するセッションで構成されていますが、社会系のセッションも少ないながらあります。
このセッションにはEUPVSECチェアのOssenbrink氏もパネラーとして登壇しており、力は入っていたようです。

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“Photovoltaics Forms Landscapes”はエネルギーと都市デザインについてのセッションです。
発電性能を面積に依存する太陽電池は必然的にランドスケープの大きな要素になります。
冒頭にエネルギーランドスケープの例として石炭の露天鉱、油田、メガソーラーに加え、福島第一の写真が大きく会場に映し出されました。

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続いてENEA(欧州原子力機関)のA. Scognamiglio氏が “no answers, but questions….”というキャッチをプロジェクタに映してエネルギーランドスケープの社会性や政治性を提起。

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トロント大Mason White氏は様々な事例を紹介しましたが、その中で印象的だったのはアイスランド・レイキャビクにある廃空港を再開発するというデザイン”GreenWay”。

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続いて建築・都市設計会社の英国Foster+PartnersのDavid Nelson氏による”SOLAR ENERGY AND CITY MASTERPLANS”ではUAEの環境エネルギー都市「マスダール」が紹介されました。
マスダールはエネルギーの自給、ゼロエミッションをめざして建設中の人工都市で、様々な技術の導入が進められています。

その技術は太陽光発電だけではありません。
例えば下の写真。左は先進国の一般的な大都市と同じ構造を持つアブダビです。

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建物の間にある道路は幅が広く、アスファルトの路面は57℃にも達しています。
一方右側はマスダール。
建物同士の距離は近く、道の幅は狭くなっています。これにより日中ほとんどの時間、道は日陰になり涼しい空間ができます。
これは中東の伝統的な街の建築を参考にしているそうです。

その他にも様々な先進技術が使われています。

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・ビームダウン型太陽熱発電・10MW太陽光発電・フレネル型太陽熱発電・トラフ式太陽熱発電・地熱発電実験井
・モニタリングシステム・空冷塔などなど。
右下は都市内を移動するための車両です。マスダールは一般車両が入れず、内部は基本的にPRT (Personal Rapid Trans)を使うことが計画されています。

このように、建物のレイアウトなどによるパッシブデザイン、冷暖房なのどアクティブデザイン、そして再生可能エネルギーによるエネルギー供給を組み合わせてデザインしています。

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パッシブデザインがコストが低く、全てのデザインの基礎になるという観点は重要かとおもいます。
本州の冬寒い家もなんとかすべき・・・

それにしても余りの規模に驚きます。
このような人工の都市に人を連れてきて「都市」が成り立つのか?
そもそもそこに住むことができる人はどういう人なのか?

このセッションは社会的な側面からエネルギーを扱うものですが、発表は結局マスダールのような巨大プロジェクト例ばかり。
そもそもUAEという特殊な政治的・経済的特徴をもつ国家ではじめて可能とも思えるプロジェクトなので、このようなプロジェクトがおかしいと言うのであれば、その主体もおかしいのでは、という話に遡ってしまうことにもなりえます(安易な西欧型民主主義の押しつけには反対ですが)。

うがった見方をすると、非常によく作られた環境エネルギー都市の設計技術と利権は石油に代わる支配のツールにもなりえるのではないか、と言えてしまうかもしれません。
太陽光はどこにでもありますが、太陽光をエネルギーに変換する装置、送る装置、そして住む場所は誰にでもどこにでも選べるわけではありません。これはいわゆる民主主義国家においてさえそうです。

マスダールの開発における社会的な公平性に対する疑問についてはパネラーも質問していましたが、はいはいデモクラシーデモクラシー、デモクラシー大切ですよ。という感じに軽く流されていたような・・・

エネルギー問題解決の本質は量なので、必然的に巨大プロジェクトになるのは当然かつ妥当なことです(なんでもかんでも市民運動、コミュニティで済む話ではない)。
新しいエネルギー都市のモデルとしては非常に興味深く、意義はあると思いますが、これが真の環境・エネルギーのランドスケープになりえるのか、そもそも環境・エネルギーは多様な人々が共有するランドスケープの何よりも優先すべき要素なのか?
やはりこれからのエネルギーランドスケープの議論をする際、社会参加の議論とは切り離せないでしょう。

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