Do elderly innovators dream of electric bicycle?

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といった話にもつながる?高齢者の日常の「おでかけ」についての研究について紹介するブースをサイエンスアゴラ2011に出展しました。
「人と都市の未来の足―高齢者向け電動アシスト自転車の可能性」(MA-90)
主催: 東京工業大学 お出かけ型介護予防プログラム開発プロジェクト(科研:代表西條美紀)
協力: ヤマハ発動機・ヤマハモーターエンジニアリング・フランスベッド

以下、ブースに貼ったポスターの一部をつかって研究の背景と目的を解説。

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2055年には高齢者(65歳以上)は4割にも達し、社会保障給付費も非常に大きな額になると予測されています。

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その対策の一つは、なるべく要介護状態にならないように、健康でいられる自立期間をなるべく長くすることだと考えられています。

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要介護状態につながるいわゆる寝たきりは、足腰の虚弱化と外出動機の減少・高齢者個人の足の欠如の負のスパイラルによって引き起こされる閉じこもりが影響しています。

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この閉じこもりを防止するためには、外出動機と高齢者の身体状況にあった移動手段が必要です。
これを電動アシスト自転車を用いて行おうというのが、本研究で目指す「お出かけ型介護予防プログラム」です。
移動手段としては、ヤマハモーターエンジニアリングが開発中の「らいふ・ウォーカー」を用いて研究。

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研究では大規模質問紙調査といったマクロ調査だけではなく、プログラムの担い手となるであろう専門職や地元の方、実際のターゲットである高齢者の方々へのヒアリングや電動アシスト自転車の貸し出し調査なども行います。
また、どのような区域が自転車によるお出かけに適切なのかも調査します。
これらの調査から、適切な自転車を選べるチェックリストや支援体制、外出動機となるアクティビティなどからなるお出かけ型介護予防プログラムを作成します。

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この研究は静岡県掛川市でおこなっています。
日本の大部分の地方市と同様の規模をもっており、このような都市の高齢者問題は大都市とは違う課題と解決方法があり、取り組むべき課題でしょう。

今年は研究初年度なので、まだまとまった知見はありませんが、取り組みの概要などをポスターとビデオで紹介しました。
当初企画では、虚弱な高齢者*向けの電動アシスト自転車「らいふ・ウォーカー」を展示し、高齢者体験装具をつけた体験試乗も行う予定でしたが、諸般の事情でより簡単な展示となりました。
(*要支援・介護の状態ではないが、心身機能の低下のため、日常生活の一部に介助を必要とする高齢者)

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そのかわりに、付箋紙で実物大らいふ・ウォーカーを再現(パネル右下)。
また、来場してくださった方々のコメントを付箋に書き取って貼りました。
出展者側が用意した情報だけではなく、来場者と出展物をつくるというコンセプトです。
サイエンスアゴラ2008出展のブースでもやった手法ですが、今回はちょっと苦肉の策ということも無きにしも非ず…

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来場者に高齢者はあまり多くなく、どちらかというと「明るく楽しい科学」が多いアゴラでこういったテーマを共有するのは意義があることだと思います。
お陰様でいろいろな方とお話をできました。

この研究には、交通計画や都市設計も関係してきますが、そこは視野に入れつつも本研究のメインテーマではありません。
本研究は、高齢者の社会活動性の向上を、電動アシスト自転車とその社会技術というイノベーションの普及によって達成しようという実践研究です。
開発中の電動アシスト自転車をどのような人に、どのように提供するか。個人に売りっぱなしでよいのか?
誰が高齢者のおでかけを支援するのか?

このように、新しい技術の開発と普及だけではなく、高齢化社会という社会的問題を通して、これからの社会のありかたをどう考え、どう解決するか、そして立場が異なる大学、自治体、企業さらに住民が参加してこれにあたるという意味で科学技術コミュニケーションの実践でもあります。

個人としては、質問紙調査のデータから年齢や身体状況、社会活動性などによって分化していく高齢者の移動型の分岐図を描き、新型の電動アシスト自転車の適合群が明らかにできればと考えています。

2011.11.27投稿