大学院授業「サイエンスカフェ~組織と運営」で毎年企画・実施しているサイエンスカフェ。
今年は例年より一ヶ月遅い2月25日に開催しました(昨年についてはこちらのエントリ)。
場所は世田谷区池尻にあるIID 世田谷ものつくり学校
中学校を改装した施設で、アート・デザイン系のワークスペースが入っており、貸出可能のイベントスペースもあります。
会場は3階の部屋。教室そのままの雰囲気でした。
今回で第9回となる東工大サイエンスカフェのタイトルは「夢を叶えるサイキン」
テーマは「細菌」「合成生物学」そしてその「未来」
合成生物学は、生物に様々な遺伝子を導入して機能させる工学の側面と、遺伝子をデザインすることで生物のメカニズムを探る理学の側面をもつ新しい学問です。研究には大腸菌が用いられています。
カフェではグループごとにどんな細菌がいたらよいかを想像し、その上で他のグループからの意見もふまえ、実際に使われたらどのような問題が引き起こされるか、そしてそれを防いだり、解決するにはどうすればよいかを議論しました。
ちょっとSF的な設定のなかで、合成生物学者、販売者、消費者などなどいろいろな立場になって考えてみるという趣向です。
話し合いの時間と種類が多いので、進行管理も大変です。
企画から当日スタッフまでをやりとげたのは7名の学生。
さらにサポートとして5名の学生が当日スタッフをつとめました。お疲れ様です。
グループは4班あり、
食品の食感を自在にかえる「とろカリッふわサクッ菌」
顔に塗ればかってに最適な化粧をしてくれるお化粧菌「Integrate setup」
どんな環境でも生き抜くことができる環境を人ひとりの周りにつくりだす「Dokodemo ikinukus」
ネコの気持ちがわかるシグナルをだしてくれる「バクテリにゃん」
など面白いアイディアがでました。
そしてこれらの夢を叶えてくれる「サイキン」が引き起こす問題、疑問として、食品としての安全性、環境破壊、猫権の侵害などがあがりました。
ゲストの木賀先生のさりげないコメントでELSI的側面まで掘り下がったのがよかったです。
今回のカフェでは、SF的でありながらも現実の科学技術とつながる話題において、その様々な可能性を議論しました。
カフェでお手軽にテクノロジーアセスメント(TA)、といった感じでしょうか。
将来を予測すると言う点ではシナリオワークショップと少し近いものもあります。
もちろんこのカフェはこれらの手法事体を目指し、TAを体験するというものではありません。
そういった参加がありえる、科学に科学者以外の立場で参加する、科学者と夢を共有することも問題も共有することも可能である、ということ気が付いてもらえれば、と思ってのサイキンカフェでした。
さてそれは叶ったのでしょうか。
多分叶ったのではないかと私は思っています。