4S二日目。今日はまず、もう一つの会場”Kilen”へ。
初日のセッションがあったSolbjerg plads 3から歩いて2-3分にある、CBSの施設です。
シンプルですが面白い建物。
■Design and displacement in energy system transition – I
朝一はエネルギー関連のセッションを選択。
ちなみに今回の学会テーマは”Design and Displacement”です。
プログラムには”When newly designed scientific and technical objects enter the world, however, their initial purposes are often displaced.”とあり、この「デザイン」と「ズレ」を明らかにし、関与していく方法を探るというのがテーマということです。
この全体テーマに基づき、このセッションではエネルギーに関してのDesignとDisplacementに関する発表が5件ありました。
インタビューをデータに様々な主体によるエネルギー問題のとらえ方のズレを記述する、といった内容で、”OC: Zero Carbon”(ゼロシー)” は政治や市場では経済性重視に偏り、 “Zero social Change”として実際に捉えられている、などといったお話。ナラティブ重視の手法で”Clean Energy Narrative”なる言葉も。
しかしどうも研究材料も手法もふわっとしてて正直腑に落ちないなぁ…
■Design and displacement in energy system transition – II
しかし、二つ目のセッションでは面白い発表を聞けました。
“Mass production of solar energy: public images of a scientific and technological object”
ポルトガルにある人口2564人の農村Amareleja村に、政府の後押しでできたメガソーラーをテーマにした研究です。
(参考:Amareleja Solar PV Plant)
農業が中心で、読み書きができない人が24%を占める小さな町に、外部から新しい技術と人とお金が流入してどのようなズレが生じているのか?
今回は全国紙と地元紙のざっくりとした紙面分析について報告されていました。
紙面では「世界一のメガソーラー」とか(実際は世界34位)、「雇用が生まれる」といった非常に明るいイメージで語られており、実際に地元行政が一般家屋への太陽電池導入に補助を出し始めたり、ファンド設立などの波及効果もあるそうです。
一方でトップダウンのやり方に批判もあるそうで、地元では実際どうなのかといったことは今後詳細なドキュメント分析や地元でのグループインタビューを行うとか。
今後に期待です。
ポルトガルに限らず日本でも太陽光発電はポジティブなイメージが先行していますが、発見しずらい故障や行政による補助・買取制度の変更による経済的リスクや、外部資本によるコミュニティの分断と「搾取」といった社会的なリスクはゼロではありません。
原子力発電とは事故というリスクでは大きく異なりますが、後者の観点においてはその構造は大きく変わらないのです。早いうちにこのズレを明らかにしなければ、やはり太陽光発電も原子力と同じ道を歩むことになるのでは、と思っています。
さて、セッションが終わって昼ごはんです。
ロビーの机にお弁当が置かれていて、それを取るというスタイル。
ホテルが近くなので、PC仕事がてら一旦帰って部屋でお食事
あまりおいしくない・・・
のですが、使い捨てと思われる木製の食器がオサレー。
■Infrastructure and displacement: Reordering information and classification
夕方は、いかに世界にあふれる情報を集め、整理するか、というテーマのセッションに参加。
ちなみに今回はこのセッションでのみ”Science Communication”という言葉を聞きました。
やはりSTSとSCは重なるようで重ならない。
さておき、このセッションでは自転車都市づくり・稀な病気の名前づけ・植物のデータベースづくりに関する三つの発表があり、どれも興味深いものでしたが、ここでは自転車に関する”Making the Cycling City Visible. Classifying urban facilities in a volunteered geographic information environment”を紹介します。
この研究はCNRS (Centre National de la Recherche Scientifique)のグループによるもので、サイクリストのGPSデータや、メーリングリストの書き込みから、自転車道に関する情報をまとめるというプロジェクトです。
この背景には “Neo-geograpy” (Turner, 2000)や “Citizens as sensors”(Goodrich, 2008)という、専門家だけではなく、数多のボランティアによる情報が新たな知を作り出す、といった考え方があります。
“Cyclability”といういわゆる自転車での走りやすさに関する評価があることもふくめ、私達がすすめている高齢者向け電動アシスト自転車の社会技術研究にとって、大きな参考になりました。