2023年12月10日に日本生命倫理学会で川本が発表しました。ReDURCプロジェクトによる公募シンポジウム「先端生命科学を取り巻くデュアルユース性への対応にむけて」の一演題です。会場は明治学院大学の白金キャンパス。日本生命倫理学会への参加は2021年につづき2回目ですが、前回はオンラインでだったので今回初めて大会の雰囲気をしることができました。
- 先端⽣命科学を取り巻くデュアルユース性への対応にむけて
オーガナイザー:四ノ宮成祥(防衛医科大学校)、三成寿作(京都大学iPS 細胞研究所上廣倫理研究部門)
- 先端⽣命科学のデュアルユース性をめぐるガバナンスと倫理の課題と展望
河原直人(九州大学病院 ARO 次世代医療センター) - ⽣成AI と合成⽣物学
木賀大介(早稲田大学 理工学術院) - 感染症研究におけるデュアルユース性に関する教材と効果
花木賢一(国立感染症研究所 安全実験管理部) - デュアルユース問題への予⾒性をどのように高めるか
川本思心(北海道大学 大学院理学研究院)
私は、「良い用途への推進」「悪い用途への転用防止」と定義されがちなデュアルユースの本質的特徴として、占有的専門性、予見困難性、社会的構築性をあげ、それに基づいて、定義や事例の学習や、帰結主義に基づく規範倫理だけでは、デュアルユースの予見性を高めるための学習は難しいことを示しました。そして事例として、レゴ®シリアスプレイ®を用いた大学院授業の事例報告をしました(三成先生・村山先生との大学院授業についてはこちら。この場をかりて改めて両先生に御礼申し上げます)。
質問では、意図していない結果については責任は負わないとする二重効果の原則との関連について質問をいただきました。これらの質問は先端生命科学のDURCと連続してはいますが、DURCは集団的行為であり同じように扱えない部分があるのではないかと考えています。この点は十分に整理する必要があるとあらためて認識しました。
また、他の発表を聞いて感じたことですが、生命倫理学会の発表の基底には、当事者の重みや痛みがあり、それにどう社会とともに専門家として応えるのか、という姿勢がにあるように思いました。デュアルユース問題を議論するときにそのような視点はまだ足りていないと気づくよい機会になりました。
今年度は国際技術哲学会、サイエンスアゴラ、STS学会と次々に発表をしてきましたが、今回の生命倫理学会で一段落です。この後はプロジェクトの総括にむけていくことになります。
以下は川本研メンバーとも関連のある発表
- ヒト胚モデルを作成する研究に関する意識調査の国際比較
由井秀樹1)、八代嘉美2)、武藤香織3)、渡部沙織3)、木矢幸孝3)、井上悠輔3)、山縣然太朗1)
(1.山梨大学、2.藤田医科大学、3.東京大学) - FPIC(研究の開始に先立つ協議と自由意思による同意)概念の検討 アイヌ民族研究の倫理指針案を手がかりに
佐藤桃子(東京大学大学院) - 病名とスティグマ
オーガナイザー:竹下啓 (東海大学医学部)
シンポジスト:
・精神疾患における病名とスティグマ
宮岡等(北里大学・医薬品医療機器総合機構)
・「らい病」が引き起こした差別と偏見
安原幸彦(東京南部法律事務所)
・わが国における糖尿病アドボカシーの歩みと未来戦略
津村和大(川崎市立川崎病院・日本糖尿病協会) - バイオエシックス教育の課題と展望-高校生に対するバイオエシックス教育-
オーガナイザー:丸山マサ美(九州大学大学院医学研究院)
報告者:川勝和哉(兵庫県立姫路東高等学校)・鈴木美香(大阪大学)・丸山マサ美(九州大学大学院)
コメンテーター:木村利人(早稲田大学)