掛川で太陽光集会

静岡県の掛川市で太陽光発電に関する市民集会を開きました。

昨年度から掛川市では、市役所の御協力のもと、私が所属するGCOEのメンバーを中心に、太陽光発電(系統連携)、コミュニケーション、環境経済の専門の方々とチームを組んで、掛川市で太陽光発電の普及のための工学的・社会的実践研究を行っています。

現在、太陽光発電は国や自治体によってさまざまな普及政策がとられています。
余剰電力の買取、自家消費発電量の証書化、そして現在、全量買取が検討されています。

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太陽光発電はCO2削減になるだけではなく、あらたな日本の産業となることが期待されているわけですが、家庭用太陽光発電がエコカーやデジタルテレビと異なる点がいくつかあります。
一つは、これまでいわゆる「消費者」と呼ばれた一般家庭もエネルギーという汎用性の高い財を生産する立場になる、という点にあると思います。
この点は、買取制度のもつ問題とともに科学技術コミュニケーションが求められる「今そこにある危機」の一つではないかとおもいますが、詳細はまたの機会に。

二つ目もう一つの点は、商品として必ずしも確立されていないという点です。
太陽光発電はメンテナンスフリーといわれていますが、実際には10年で10%くらいの割合で故障するという報告があります。

10年以内であればメーカー保障があるのですが、それ以降は有償修理になりますし、そもそも故障に気付かなければ補償も受けられません。
発電量のチェックは、メーカー設置の表示パネルなどでできるのですが、それは現在の発電量を示しているだけで、それが現在の日射と気温の条件下で本来の性能を発揮した発電量なのかどうかはわからないのです。

もし発電量が低いまま発電を続けていると、初期投資の回収が遅れてしまいます。
現在の普及政策は初期投資が早く回収できるようにすることを目的としているので、これでは意味がありません。

そこで東京工業大学のチームでは、発電量がチェックできる「太陽光発電自己診断支援システム」(愛称を考え中)をつくり、それを掛川市で実証しています。
掛川市役所の屋上に日射計と温度計を設置し、それから各お宅に設置されたパネルの推定発電量と発電電力量を計算するというものです。
掛川市役所から半径数kmの範囲であれば正確かつほぼリアルタイムの気象データから正確な推定ができるのです。

掛川市で現在太陽光パネルが導入されているのはおよそ1000世帯、そのうち100世帯がグリーン電力証書モデル事業に参加しその100名を対象にモニター使用をお願いしています。
そのうち現在のところ診断システムを利用しているのは30世帯です。

ということで前置きがやたらと長くなってしまいましたが、
今回はそこから10世帯の方々にご参会ただき、約半年の使用実績の御報告や、システム改善のための意見交換をおこないました。

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参加された方々はまさにイノベーター
経済的・環境的な関心ももちろん高いのですが、技術的な関心も非常に高く、活発な情報交換ができました。

現在のところ人力入力が必要なこの診断システムは、こういったイノベーターの方々には使っていただけるでしょうが、そうではない方々には難しいかもしれません。

研究の方向としては、掛川市で、より使いやすいシステムへ改良すること。
そしてこのシステムや証書事業で得た資金をもちいて、太陽光発電を一部の人のものではなく地域の資源として意識化していくコミュニケーションデザインをすることです。

将来的にはより負担のない自己診断システムへと改良し、地域ごとに観測ポイントが設置され、より商品として、そして環境貢献として優れた太陽光発電システムになればと思います。
そのうちグーグルとかが気象観測データロガーをあちこちに設置しそうな気がしますが・・・そういうつながりもあるかもしれません。