ミミズの雑学

  • 2012年9月18日
ミミズの雑学 (環境Eco選書) ミミズの雑学 (環境Eco選書)
(2012/06)
渡辺 弘之

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時間が一寸空いたので丸善本店で生物学の本棚をながめていて発見した本書。
ミミズと土壌研究の第一人者、渡辺先生による本です。
おまけに生物図鑑で有名な北隆館。装丁もいかにも北隆館で期待が盛り上がります。

しかし、ぱらぱらとめくってみると、どこかでみたような文章や写真がならんでいます。
ヒゲの人がハッタミミズを手に取る写真をみてハッタと気が付きました(うわ)。
ミミズ 嫌われ者のはたらきもの』と同じだ!

ということで帰宅してからよく読んでみると、前書きにご自身で上記の『ミミズ』(2003年)と『ミミズのダンスが大地を潤す』(1995)と重複しているところがある、と触れられていました。

しかし新しい部分も勿論あります。
まず、既述したハッタミミズをもっている写真は実は同じではなく、ちょっと違っていました。

20120918-1

左)『ミミズ』p.34  右)『ミミズの雑学』p.80のイメージ図
同じ日時・場所で撮っていますが違う写真です。ちょっとアングルが違う。

他にも「大きなミミズ」の節(pp.64-65)では『ミミズ』と同じくアマゾンの伝説の巨大”ミミズ”について書かれていますが、胴回り4.57mものミミズは、皮膚呼吸をするミミズとしてはあり得ないということが追記されています。これはおそらく『ゾウの時間ネズミの時間』本川達雄(中公新書、1992)からの引用でしょうか。

第3章「ミミズの文化考」はこれまでより加筆されている部分が多いようです。
特に私が興味をもったのは、谷中の玉林禅寺の涅槃図に雌雄ペアのミミズが描かれているという部分(ちなみにミミズは雌雄同体で、二匹で交接します)。

他にも以下のミミズが書かれた涅槃図が紹介されていました。
・京都神楽岡の真正極楽寺如来堂
・宝塚の中山寺
・宝塚の清荒神清澄寺
・菱川師宣記念館の釈迦涅槃図
機会があればぜひ見に行くことにします。

さらにおもしろいことに、この章の末では仮面ライダーのミミズ男についても触れられています。
(ミミズ男については本ブログの以前のエントリ参照)

巻末には「ミミズ参考書」として6ページにわたって洋書・和書等がならべられています。
これはビブリオグラフィとして貴重で『ミミズ』よりも多くの書籍が掲載されています。

ということで本書はミミズについて生物学的なことだけでなく、民俗学的なことも知りたい場合には決定版・最新版といっていいかもしれません。

次回作はまた10年後でしょうか。
渡辺先生にはこれからも御活躍頂ければと思います。